二人の短い物語



「楽俊」
「うん」
「その本、そんなに面白いの?」
「うん」
「私と話するよりも?」
「うん」
「……ふぅん」



「楽俊」
「うん」
「お茶でも淹れようか?」
「うん」
「甘いものもいる?」
「うん」


「お茶、冷めてしまうよ?」
「うん」
「その本、そんなに面白い?」
「うん」
「……」



「楽俊」
「うん」
「空、曇ってきたみたい」
「うん」
「明日あたり、雨が降るかな?」
「うん」
「大降りになると思う?」
「うん」
「その本、そんなに面白いんだ?」
「うん」
「…………」



「楽俊」
「うん」
「簡単にだけど、夕食を用意したんだ」
「うん」
「ここに置いとくから、一息ついたら食べてね」
「うん」
「ちゃんと食べてね」
「うん」
「それ、嘘だろう?」
「うん」
「……その本、本当に面白いんだね」
「うん」
「…………」



「楽俊」
「うん」
「楽俊」
「うん」
「楽俊」
「うん」
「……………………好き」
「うん――って、今何て言った?」
「別に。何も」
「なぁ、何て言ったんだ? もう一回、聞かせてくれ」
「なーんにも、言ってない」
「陽子……」
「読書は、もう終わり?」
「いや――あぁ、終わった。もう終わりだ」
「そう。なら、まずはご飯食べて、お風呂に入ってきて。話しはその後」
「陽子」
「後で」
「…………」
「ねぇ、楽俊」
「うん?」
「明日からは、ちゃんと私を見てほしい」






あなたを待っています…クロッカス